少子化はお金だけでは解決できない

前回、2024年の出生数の概算値が68.6万人になったと書いた。

一方、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の
①「日本の将来推計人口R5年推計 基本推計結果表1-8」では、出生数がこれ以下になるのは2044年(中位推計)。
少子化は国の推計よりも20年早く進んでいる
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp2023_ReportALLc.pdf
国の推計では「合計特殊出生率がR5年の1.22を底に徐々に増える」と仮定していることに無理がある。

日本人が結婚・子作りしなくなった理由を調べた。

社人研がほぼ5年毎に調査結果をまとめている。
②「現代日本の結婚と出産−第16回出生動向基本調査報告書−」
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/doukou16_gaiyo.asp
2021年の調査結果を見ていく。

結婚について、
「一生結婚するつもりがない」独身者が増えていることについて、
独身生活の利点は、「行動や生き方が自由」が最多(70%以上)
次に多いのは「家族を養う責任がなく気楽」
また「一人の生活を続けても寂しくない」人が増加
・・ネットが普及したためか?

結婚へのハードルは、
「結婚資金(挙式や新生活の準備費用)」が最多(40%以上)
次の「職業や仕事上の問題」が増加傾向であり、女性のほうが多い
・・女性の社会進出の影響か?

独身でいる理由は、
24歳以下の女性は「今は仕事に打ち込みたい」
25歳以上は男女とも「適当な相手にまだめぐり会わない」
・・年をとるほど要求レベルが上がってしまう?

結婚相手に求める条件は、
男女とも「人柄」が最多で、以前と変わらない
男→女への条件で増えているのは「経済力」
女→男への条件で増えているのは「容姿」
・・相手に求める条件が昔とは逆に

子供を持つことについて、
未婚者が子供を持ちたい理由は、男女とも「子供がいると生活が楽しく心が豊かになるから」が最多で変わらず
特徴的なのは「結婚して子供を持つことは当然」と考える人が激減
特に女性は約4割減少
・・結婚に関する意識が急激に変化

既婚者では、理想の子供数より実際の子供数が少ない。その理由としては、
「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が最多
特徴的なのは、
「高年齢で産むのは嫌」が40.4%
・・出産の高年齢化で増えたか?
「これ以上育児の心理的・肉体的負担に耐えられない」が23%
夫の家事・育児への協力が得られない」が11.5%
・・子供を増やすには夫の協力が必要

更に踏み込んだ資料があった。
内閣府の海外調査資料によれば、
「自国はこどもを生み育てやすいと思うか?」
→日本人の6割以上が「そう思わない」と回答
ヨーロッパ諸国の約3倍のレベル
・・周囲の環境や意識も少子化の原因

また、
「結婚、妊娠、こども・子育てに温かい社会の実現に向かっているか?」
→日本人の7割以上が「そう思わない」と回答
その理由は、夫の家事・育児の時間が短いからだろう
1日1時間54分で、欧米の夫の6割程度

休日の夫の家事・育児の時間が長いほど、第2子以降が多く生まれるというデータもある。
・・子供を増やすには夫の協力が不可欠

②の資料に戻ると、独身の男女とも、
「赤ちゃんや小さい子供とふれあう機会がよくあった」
「両親のような夫婦関係を羨ましく思う」
「結婚している友人を見ると、幸せそうだと思う」
に当てはまる人のほうが「いずれ結婚するつもり」と考える人が多い
当てはまらない人に「一生結婚するつもりはない」人が多い
今回調査では、当てはまらない女性が増えている

女性の意識として、
「同性同士の結婚も構わない」に賛成が88.3%
「生涯独身は望ましくない」に反対が59.3%
「結婚したら子供は持つべき」に反対が61.7%
というように、結婚しない・子供なしを許容する意識が過半数を占めている。
このような人は、実際に子供の数が少なくなる傾向にある。

以上、結婚や出産には経済的条件が大きな影響を及ぼす。
だが、国が対策に累計66兆円投入しても少子化に歯止めがかかっていない。
だから、お金以外の対策が必要だ。

調査結果から、当事者の意識少子化の原因だと言える。
その意識を作っているのは社会通念や周囲の環境であり、これを変えていかなければ出生数は増えないだろう。