そこはかとなく

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なぜ定年制があるのか?

現在、ほとんどの企業に定年制がある。
定年年齢の主流は60歳から65歳に上がりつつあるが、定年制は必要なのだろうか?

そもそも定年制はいつ何のためにできたのか?
古くは養老律令(757年)に以下の記述がある。
「凡そ官人年七十以上にして、致仕聴す。」
役人さんは70歳で(自主的に)辞職する、という意味らしい。
また、明治時代、東京砲兵工廠の職工規定(1887年)には、55歳が定年と定められていたらしい。
だが、この頃は平均寿命が短かった。
30歳を超えたのは1900年以降だったと記憶している。
それ以前に55歳とか70歳を上限としたのは、実質的な意味がなかったのではないか?
もういい加減、辞めたら~?
残っているのはあなただけだよ~ くらいの縛りか。
定年年齢が実質的な意味を持ってきたのは、戦後、寿命が伸びてからだろう。

年齢を理由に退職させるというのは年齢差別であり、違法であると考えるのが普通だ。
実際、欧米諸国では違法とされている。
私も昔、定年制が世界標準だと信じていた。
それで「シニア」何とか、という肩書のアメリカ人に質問したことがある。
「この会社の定年年齢は何歳ですか?」
既に65歳だった彼の答えはこうだった。
「年齢で解雇するのは違法だ。いつ退職するかはモチベーションの問題だ。」
それで私は、アメリカが正しい、日本は異色だと気づくとともに、人生の大先輩に謝罪した。

一方、日本では定年制が当たり前になっている。
60歳や65歳で会社を辞める。
人生、そういうもんだと皆思っている。
違法という話にはならない。

定年制の維持には労働組合も賛成している向きがある。
定年制があれば、少なくとも定年年齢までは雇用が確保されるからだ。
そうやって優秀な人が定年で会社を去る代わりに、能力のない人の雇用が確保される。
これは本人や会社にとっていいことなのだろうか?

国は、企業が定年年齢を引き上げるよう仕向けている。
そんなまどろっこしいことをせずに、
「年齢で社員をクビにするのは違法だ」
と一言言えばいいだけのような気がする。
そう、定年退職は皆が認めるクビなのだ。