何十年も前の大学受験の話になる。
受験旅行は人生初の一人旅であり、悲惨なことになった。
高3のとき、受験のため初めて東京に行った。
新幹線で行けばよかったのに、寝台特急を使ったのが間違いの始まりだった。
寝台は個室でないので落ち着かない。
列車が1時間ごとに駅に停まる度に目が覚めて、朝になったら完全に寝不足だった。
東京に着いたら朝7時で、マックくらいしか開いていない。
ホテルはまだチェックインできないので、仕方なく大都会を散策した。
重い荷物を持ったまま。
どう見ても受験生の格好だったこともあり、キャッチセールスにつかまった。
長々とおいしい話をされたあげく、金券を買えと言われた。
幸い、お断りできたけど、ほとほと疲れた。
それから大学の下見に行った。
不慣れなことばかりで、ホテルにチェックインした時には疲労困憊していた。
ホテルは旅行代理店の「受験生の宿」というものだった。
旅慣れていない受験生にとって、何となく安心感のあるネーミングだった。
しかし、当時、中身はちょっと高めのビジネスホテルだった。
部屋の照明は薄暗いし、机は狭かった。
最後の追い込みをするぞ、という気力もなく、だらだらと参考書を読む程度だった。
受験生の宿には食事が付いていた。
18時ごろ、中華レストランに行ったら受験生がたくさん来ていた。
同じテーブルに数人座ったとき、ウェイターが注文を取りに来た。
皆、初めての一人旅だっただろう。
何を注文していいか分からず困っていた。
そういうことはよくあるのだろう。
ウェイターが適当に料理を見繕ってくれることになった。
一応、王子様系のホテルだったので、料理は美味しかったが、お通夜のように黙々と食べた。
皆、同じような感じだった。
食事が終わって部屋に帰ろうとしたら、受験生の一人が話しかけてきた。
地方の一流高校の学生で、頭がよさそうだった。
30分ほど受験のことなどしゃべったら、少し孤独感が抜けてきた。
それにしても無謀だった。
自分の計画の無さが嫌になった。
受験には失敗した。
もともと無茶な挑戦だったので、できなくてもやっぱりという感じだった。
また来年受験しようと思った。
そして、翌年は合格した。
そのときは、勉強だけでなく旅行の計画も万端だった。
大学に近くて安いホテルを利用した。
学生寮と兼用なので、安い食事もとれた。
部屋は明るく、電気スタンドも付いていた。
机も勉強にちょうどいいものだった。
ホテルのチェックイン開始頃に着くよう、新幹線で行った。
荷物も最適化した。
試験の出来はよくなかったけど、何とか合格できた。
初めての一人旅は良い思い出になっている。
(参考)
大学生の時、台湾の知り合いが東京に来たのでホテルに会いに行った。
池袋の「太陽王子ホテル」に泊まると聞いた。
そんなホテルがあったかな?と思ったが、それはサンシャイン・プリンスホテルだった。