近江ミッション(2)’ 近江兄弟社のその後

近江兄弟社ヴォーリズが創設した会社である。
近江ミッション(2)ヴォーリズについて知る の派生として、今回はヴォーリズ亡き後の同社の危機と再建について書きたい。
アルバート・ハイド氏は、メンソレータムを考案しメンソレータム社を設立した。
同氏はYMCAの支援者であった。
ヴォーリズはハイドと旧知の間柄だったことから、メンソレータムの日本での販売権を獲得、近江兄弟社(以下、近江社)の前身を創設した。
アルバート・ハイド

メンソレータムは、近江社に利益をもたらした。
しかし、ライバル商品(オロナインH軟膏?)との競争などで経営が悪化
1974年に会社更生法を申請し(後に取下げ)、商標権も失う
メンソレータムの製造販売権はロート製薬が取得した。
一方、近江社の経営再建には有力な商品が必要であった。
メンソレータムの製造技術と設備は残っていたので、その類似品を作ることにした。
成分についてはロート製薬と交渉した上で決めた。
ただ、商品名は使えない。
かつて近江社はメンソレータムの類似品に悩まされてきた。
名称もメンタームなど、似たような名前であった。
(現在もメンタムという商品がある)
近江社は裁判を起こしたが「メンタームは一般的に定着している」ということで敗訴した。
それでは、ということで近江社は、再建のため類似品にメンタームSという名前を付けた。
かつての本家が類似品を売るにあたり、類似品の名前を付けたことになる。
品名に慣れている消費者には分かりやすいだろう。
もう1つ、キャラクターの問題があった。
有名な「リトルナース」に対抗するキャラが必要だ。
このキャラは海外風だが、作者は今竹七郎
(元になったと思われる絵は以前から製品に使われていたが)
近江社は再度、今竹氏に新キャラを依頼。
ナースは女の子だから今度は男の子で、顔の向きも少し変えて。
こうして「メンタームキッド」が生まれた。
メンソレータムとメンターム 定番塗り薬100年の秘史 時を刻む - 日本経済新聞

かつて殿様商売と言われた社風も変えた。
営業では社員全員が小売店などに売り込み、1980年には黒字決算を計上した。
近江商人の血を引く社員の知恵と努力で経営再建を果たしたと言えよう。
このような経緯で、ロート製薬メンソレータム近江兄弟社メンタームが現在販売されている。

なお、事実に反する記載がありましたら、コメントください。

(つづく)