そこはかとなく

日常の記録や気付いたこと、調べたことなどを書いています。

ローマの休日 ジェラートの思い出

最近、重い記事が多いので、今日はゆるい記事にしたい。
テレビでジェラートの話をしていたので思い出した。

若い頃、イタリアに旅行に行った。
シチリアから入ってローマ、フィレンツェなどを回った。
ローマと言えば、スペイン広場は欠かせない。
映画「ローマの休日」で、オードリー・ヘップバーンが演じる某国の王女がジェラートを食べた場所。
1953年の映画だが、観たら必ず訪れたくなる。
バブルの頃は、多くの日本人観光客が広場でジェラートを食べたらしい。
私も映画を観たので行ってみた。

当時、スペイン広場ではジェラートの販売が既に禁止になっていた。
それでもジェラートを売っていないか探した。
朝9時過ぎ、階段の上の道端にお菓子を売る屋台がいた。
畳1枚分くらいの屋根付き屋台で、ジェラートも売っていた。
30歳くらいの非イタリア人の店主がにこやかに迎えてくれた。
彼と少しお話をした。
店主はアルジェリアから来ている、子供がいる、お金を稼いで帰りたい、売れ行きはそこそこ など。
フレンドリーな感じだった。

それからジェラートを1つ買った。
5千リラだった。
当時の為替で350円くらい。
財布の中を見ると、5万リラ紙幣(3500円くらい)が1枚だけあった。

それを渡したら、お釣りがないと言う。
財布の中をよく探してみろと言われて探したが、なかった。
ジェラートは既に受け取っていた。

店主は言った。
「もうすぐ銀行が開くので両替してくる」
「帰るまで屋台の店番をしていてほしい」
店主は、私の5万リラを持ってどこかに消えた。
ジェラートの販売は違法だと知っていた。
仕方なく、屋台から少し離れて店番をしていた。

ジェラートはすぐに食べ終わった。
普通に美味しかった。
時間がたつのが非常に遅く感じた。

10分ほどしたら、20代の女性3人組が近付いてきた。
ジェラートがどうとか、あそこにある!とか言っている。
日本人のようだ。
屋台から5mほど離れて様子を見ていた。
女性たちは、屋台に人がいないのが分かって残念そうに去っていった。
ほっとした。
売上げには貢献しなかったが。
今思えば、女性たちと楽しく会話して、適当にジェラートを売っておけばよかった。
楽しい思い出になっただろう。
しかし、売った途端に警察が出てきて逮捕されたら、とも思う。

それにしても、店主の帰りが遅い。
警察が来ないか心配だった。
一方、だんだんと疑念がわいてきた。
もしかして私の5万リラを奪うつもりではないか?
観光客の私が時間がなくて立ち去るのを待っているのではないか?
カプチーノを飲んで。

もしそうであれば、私は5万リラの元を取るため、ジェラートをあと10個は食べないといけない。
それは無理。屋台のお菓子を5万リラ分いただくか?
お菓子が30個は必要だ。
置いてあるお菓子を見ると、ポテチは大きすぎてカバンに入らない。
チョコは溶けるかもしれない。
となると、ガムか飴かグミか。
どれも普段食べないものだが仕方がない。
日本へのお土産にするか。。。

などと30分ほど妄想していたら、店主が帰ってきた。
息を切らして、にこにこしながら。
今さっき、銀行が開いたらしい。
店主からお釣りを受け取った。
お客さんが来なかったか聞かれた。
来なかったと答えた。

メロス、私の頬をぶってくれ!
私はあなたのことを思い切り疑っていた。
とは言わなかったが、疑って妄想していた自分が恥ずかしくなった。

無事終わってしまえば、いい思い出になった。
映画などの名シーンの場所を訪れるのは楽しい。
作品を2度楽しめる。
日本では、聖地と呼ばれるようになった。
また心に残っている作品の聖地を訪ねてみたい。