フェルミ推定 漠然とした問題を程よく解決

例えば、
・今年、花見の場所取りをした人の数
・去年、浮気がばれて離婚した人の数
などなど、漠然とした問題を解いてみたいと思ったことはないだろうか?
その解き方として「フェルミ推定」がある。

エンリコ・フェルミ氏はイタリア出身の物理学者で、映画「オッペンハイマー」で描かれた、原爆を開発するマンハッタン計画にも参画した。
フェルミ氏の名前が残る言葉には、フェルミ準位やフェルミ粒子だけでなく、フェルミ推定がある。


フェルミ推定とは、彼が得意としていた概算の方法であり、漠然とした数値を推定したいとき、その桁が合っていればいいというものだが、実用的である。
彼が原爆の威力を計算するのに用いたと言われている。

彼の死後、コンサル会社などが就職試験でフェルミ推定の問題を出した。
論理的な思考力を試すのに持って来いだから。
試験でなくとも、仕事にもプライベートにも役に立つ。

では早速計算してみよう。
正解があるものを推定したほうがいいだろう。

Q:日本でタバコの販売本数は年間何本か?

日本の人口は1億2600万人であるとしよう。
これ以外はフェルミっぽく推測するしかない。

人口のうち喫煙できる人口は、成人のみで1億1000万人くらいだろう。

そのうち喫煙者は何%くらいだろうか?
男女で大きく異なるだろう。
男性の場合、50%はいないから40%くらいかな。
30%では少ないだろう。
女性は、かなり少ないから10%としよう。
すると男女平均で25%になる。
このように、自分が納得できる値を積み重ねていく。

1人当たり1日何本吸うだろうか?
少ない人でも、毎食後には吸うだろう。
それに、仕事が終わって1本、寝る前に1本は吸うだろう。
以上で、少ない人は5本。
多い人はどのくらいか?
キリがいいところで1箱で20本くらいか?
もっと吸う人もいるが、多くの人はこのくらいまでだろう。
以上の推定で大きく外れてはいないだろう。

1日に吸う本数の平均値を求める。
「相加平均」では2つの値を足して2で割るが、曖昧な数値の場合は「相乗平均」のほうが当たるようだ。
相乗平均では2つの値を掛けて平方根をとる。
ルート(5×20)=10(本)
大きく外れてはいないだろう。

以上で必要なデータがそろった。

1人1日 10本吸う
1年は 365日
喫煙できる人 1.1億人
喫煙率 25%

よって、タバコ消費量
 =10本×365日×1.1億人×0.25
 ≒1000億本
販売量は消費量に等しいとすると、これが答になる。

答え合わせ
正しい販売量は、937億本(2021年)なので、かなり近い推定ができた。
単なる偶然だが。
(ちなみに喫煙率は16.7%(2019年)なので、だいぶ多めに推測していた。)
いつもこんなにうまくいくとは限らない。
倍・半分くらいになる可能性はある。
元となる数値が適当だから。

なお、読書猿氏の「問題解決大全」では、喫煙者は非喫煙者と比べてどの程度寿命が縮むかを求めていた。
正解は4年少々で、フェルミ推定の結果とよく一致していた。