映画「とんび」と「19の春」

重松 清の小説「とんび」については先日書いた。

重松 清 「とんび」 - そこはかとなく

事故で妻が亡くなり、不器用な男が1人息子を育てる話。
親をなくした子、子をなくした親の生き様がテーマ。
小説がとても良かったので映画も見た。
映画もとてもよかった。
話の中で感動する所が分かるので、そのシーンが始まったらすぐに涙腺が緩んで仕方がなかった。

映画特有の良い所もたくさんあった。
主人公の話ではないが良かった所の1つを紹介したい。
娘が幼いとき、飲み屋の女将さんが捨てた娘がいた。
嫁入り前に母親に会いたいと、その飲み屋に行く。
小説では、女将さんが娘に間接的に語りかける台詞が1つ1つ心にしみた。
それは映画にもあった。

更に映画では、そのシーンを締めるためにヤスさん(阿部 寛)が歌を歌った。
曲は「19の春」。
嫁入り前の娘さん向けの歌詞ではないけど、阿部寛の歌い方が力強かった。
ネーネーズ田端義夫も優しく丁寧に歌う曲。
こんな力強い歌い方もあるのかと意外に思った。
武骨なヤスさんらしい歌い方。
そして仲間もつられて歌い出す。

歌詞をよく見ると、この曲を選んだ理由が何となく分かった。

一、私があなたに惚れたのは ちょうど十九の春でした
 いまさら離縁と言うならば 元の十九にしておくれ
二、元の十九にするならば 庭の枯れ木を見てごらん
 枯れ木に花が咲いたなら 十九にするのもやすけれど
三、見捨て心があるならば 早くお知らせくださいね
 年も若くあるうちに 思い残すな明日の花
四、一銭二銭の葉書さえ 千里万里と旅をする
 同じコザ市に住みながら 会えぬ我が身の切なさよ
五、 主さん主さんと呼んだとて 主さんにゃ立派な方がある
 いくら主さんと呼んだとて 一生忘れぬ片思い
六、奥山住まいのウグイスは 梅の小枝で昼寝して
 春が来るよな夢を見て ホケキョホケキョと鳴いていた

1番では19に戻してくれと無理を言うが、2番ではそれが無理だと分かっている。
3番では自分の悲しい運命に気付いている。
4番ではやるせない気持ちを歌い、5番では世の定めを理解。
そして6番では思い出に浸りながら静かに暮らす。
(映画の歌は1番、3番、4番、5番)

親がいない子供、親に捨てられた子供の切なさややるせなさと同じものがあるのではないか?
それで昔、事情により母親に捨てられた娘に、母親の代わりに歌って聞かせた。
「昔のことは忘れて、幸せになれよ」と。
それも、力強く、心の奥まで染み入るように。
お薦めの作品。